「渚...」

拓海くんの指先がそっと涙を拭ってくれる。

「ごめん...」

拓海くんの辛さや恐怖、心細さがわかるはずもないのに。
泣くなんて偽善的でしかない。


「渚と隣の席になってさ、
すごく楽しかったんだよね！」

涙を必死でこらえるあたしに笑顔を向けた。
哀しさや憂いを含んだような、複雑ではかない笑顔。


「まわりのただギャーギャーゆってる奴らとはなんか違ってさ、
もう一つ向こう側をみようとしてるような、丁寧に俺の話し聞いてくれるとことか..
すごく居心地よかった。」


「そんな...」


拓海くんはそんな風にあたしを見ていてくれていたんだ...。


「花火大会のとき...

告白しようと思ってたよ」




鼓動が突然早鐘のように鳴り出す。

あたしはさっきから何も言えず、
泣いたりあたふたしているだけ。

感情が追いつかない。


「渚が好きだった」