「花火大会行けなくてごめん...」


あの夏の記憶が一瞬で蘇る。
胸が途端に苦しくなってなにも言えない。

拓海くんは淡々と続ける。

クールな表情からは何もうかがえない。


「急性白血病だったんだ、俺....」


衝撃が走る。

このあたしでさえ、一度は耳にした事のある病名..

血液のがん、だのと聞いたことがある、恐ろしい病気...
そんな重大な病気だったなんて...

「恥ずかしい話しだけど...俺、ほんとに怖くてさ~

もう死ぬんだって思った。
即入院させられて、自分の気持ちも追いつかないまんま、抗がん剤治療だの手術だのもう本当にわけがわからなくてさ...」

まだ中学生の少年にとって
生死に関わる病気にある日突然侵され
どんなに恐ろしかったのだろう。
想像を絶する恐怖だったに違いない。

当時を思い出して気丈に唇を震わす拓海くんを見ていたら勝手に涙が溢れてきた。