席替えしてから、拓海くんの観察を楽しんだ。

校庭でサッカーの授業をしてるクラスがあれば
窓ぎわのあたしを通り越して
自分の授業そっちのけで真剣顔。


真剣すぎてたまに
あっ!
とか声をあげたりして、恥ずかしそうにあたしを見て、照れ臭そうに笑う。



よく教科書を忘れる。
次の日の時間割の準備をしてきたり。
わりとドジ??


その度あたしの教科書を一緒に見る。


他のクラスにも友達はたくさんいるんだから、借してもらえばいいのに。


拓海くんいわく、借りても返し忘れて怒られるから嫌なんだとか。


なんだかかわいい..。



でも

もう何回もあたしの教科書を一緒に見てるのに
今だにあたしは
拓海くんの距離感にドキマギしてしまうんだ。


無防備で人馴れしてる拓海くんは
なんともない瞬間に触れそうなくらい近づく瞬間がある。


今まで男子と接近なんてしたことないあたしは
体の芯がぎゅっとなるようなドキドキした落ち着かない気持ちになる。


まったくやめてほしい。




ある日はこんなことがあった。

「ねえ、森川さん見て」


授業中小さな声で話しかけてきた。


見てみると、消しゴムのゴミが連なってすっごく長く繋がってる。
20センチはある。


「すごくない??」


いたずらっ子みたいにクシャっと笑った。


「ぶはっっ」


思わず吹き出してしまった。
くだらなすぎる。
くだらなすぎてツボにハマってしまった。


先生がギロっとこちらを見た。


「ちょっ、笑わせないで~!!」

小声でささやく。


「森川さんもやってみて~!」


「え~(汗)」


「俺のこの消しゴムが、やりやすいんだよ!ゴミが散らんないやつなんだぜー」

子どもか!!


「半分あげるから競争しよー」

あたしが何か答える前に
まだ新しいその消しゴムをカッターで半分に切って

はいっ
とくれた。


あたしもなんだか面白くなってきてしまって

拓海くんの真似して何も書いちゃいないノートを、ただ長い消しゴムのカスを作るために消し続けた。

2人で。


何をやってるんだろう...