クラスの目立つ女の子たちは、誰がカッコいいとか、誰が好きだとか、
付き合ったとか別れたとか..
キャーキャー楽しそうにしてるのに..


恋もしたことのないあたしには
ちょっと派手な男の子と話すだけの事も容易にこなせない。


でも拓海くんはそんな事なんてまるで気にしていない。


ヨイショ、っと机を先に座っていたあたしの机にピッタリくっつけた。

距離感...!

拓海くんの身体が触れそうなくらい急接近した。

さっきも言ったとおり、男子と話すことすらままならないおこちゃまなあたし。

ビックリして、ドキドキして、カァっと顔が赤くなるのが自分でわかった。

なんて経験値の低いあたしなんだ..
ダサすぎ。


拓海くんに気づかれませんように!
冷静なフリを装う。


「まぁヨロシクね!」


爽やかな笑顔で拓海くんが言った。


女の子の友達もたくさんいる拓海くんには、こんなことなんでもないことなんだな。

勝手に意識して赤くなったりして、余計に恥ずかしくなる。


「うん、ヨロシクね。」

無難に、変じゃないように、普通に見えるように答えた。


でも、拓海くんが隣の席で、ちょっと嬉しいような気もする。

目立つグループの男の子、友達もたくさんいて
サッカー部でも活躍していて、背もスラっと高くて、フワフワの髪型とか気さくな話し方とか
カッコつけてないところがカッコいいんだ
なんて他の女の子たちがうわさしているような男の子。


根暗で人見知りで地味で
人間観察くらいしか趣味がないあたしの
格好の観察対象が現れた。

これから夏休みまでの4ヶ月、噂のすてきな男の子の観察を密かに楽しもうじゃないか。