クラスメイトで、仲の良い女子、平沼莉緒(ヒラヌマリオ)が声を掛けて来た。


「え?誰が?」


そう聞くと、莉緒は口角を上げて、ニヤリと笑った。


「い・と・し・の・カ・レ・が♪」


なっ...。


莉緒め…。


それでも怒りを鎮め、「わかった」と言って席を立ち上がるあたしを、莉緒がニヤニヤしながら見ている。


「莉緒~、気持ち悪いからやめてよ~」


笑いながら莉緒にそう言い、“愛しのカレ”の元へと向かった。


「健都! どうしたの?」


目の前に立ってニコニコ笑っているのは、林健都(ハヤシケント)、高2。


莉緒の言った通り、あたしの彼氏だ。


健都はあたしの質問には答えず、暫く頭をポリポリと掻いていた。