合宿も終わり、ひと段落ついた頃、渡されたのは『進路希望調査』の用紙だった。

うーむ。

進学か就職かもわからない。

将来の夢もない。

とりあえずなにか埋めなければならないのはわかっているが、どうにも埋まらない。

「桜も咲子も、頭いいもんね〜。いいなぁ。」

1クラス40人×5クラスのこの学校で、常に一桁順位の二人だ。

「あら、あたしは就職よ?ていうか、そろそろ本格的にオーディション受けるし。」

「あたしはパティシエになりたいから、専門学校かなぁ。」

二人とも、頭がいいのに四年大学には進学しないのだ。

私よりもはるかに成績のいい二人でさえ進学希望ではないのに、何の目的もない私が大学に行きたいだなんてなんとなく恥ずかしかった。

「二人とも、頭良いのに、もったいないよぉ〜。使わないなら、それ分けてー!」

「出来て越したことはないからね。まぁ、先生が進学しろってうるさいけれど。」

否定はしない。桜らしい。

「そういえば、なんで桜は芸能界目指してるの?」

桜ならなれてしまいそうだが、普通芸能界は夢のような存在だ。

憧れても、なりたいと思うまでにはさすがにならなかった、というのが私の経験である。

「こにちゃん、今度うち来ない?」

あまりにも唐突だったが、何の疑問も抱かずに首を縦に振った。