ソラは今日も喧嘩中

それからまた黙ったままの空間を引き裂くように、店員さんがコーヒーとミルクティーを運んでくれた。

大空はすぐにコーヒーに手をつけたけれど、私は身動きひとつとれずにいた。

大空がかちゃりとコーヒーカップを置くと、

「だっさいだろ?こにちゃんにだけは、気づかれたくなかった。

カッコ悪くて、幻滅したんでしょ。」

そう言って、私の方は一度も見てくれなかった。

私は、大きく首を横に振った。

それから、唇を噛みしめて、スカートをシワになるほどぎゅっと握り締めた。

「俺、もうさ、高校でバスケできない....。

こにちゃんにも、応援してもらえないしさ。

コートに立てないのに、やる意味ないっしょ。」

そう言って、大空がそれ以上言葉を続けられなくなったのがわかった。

「...意味なくなんか、ない。」

すとん、と、言葉が流れ落ちた。

「コートに立つだけが全てじゃない。

サポートしてチームが強くなったら、それはやっぱり直接コートに立たなくても、ボールに触れなくても、チームの力の一つじゃないの。

大空の、大空にとってのバスケって、なに?」

そう言って、言ってしまってから、私がやらかしてしまったことに気づいた。

大空が誰よりもバスケが好きなのは、私が一番わかっているはずなのに。

「そんなの、頭では分かってんだよ。」

ほら、やっぱり。

バカだ、私ってなんでこう大空を傷つける天才なんだろう。

「こにちゃん、振るなら今だよ?」


「は!?何言ってんの、そんなの嫌だよ私が嫌!
幸せにすんじゃなかったの!?

大空の嘘つき、ばか、あんぽんたん!!」

そう言って、財布から千円札を抜き出すと、ばんっと机の上に置いて、その場を後にした。