「♫♬〜」

キィ…

ピアノを邪魔したくなくて、そっとドアを開けてのぞいた。

…!


整った横顔と、長いまつげは変わっていなかった。

細く、綺麗な指が音を丁寧に奏でていく。

でも、前より悲しそうなのはなぜ…?


そんなことを考えていると。


「そうですね、それでは…」

廊下の向こうから先生の話し声が近づいてきた。

ど、どうしよう…!!


音楽室は廊下の突き当たり。

隠れる場所もない。
かと言って戻ると鉢合わせになって、抜け出したことを怒られる。

まさに絶体絶命。


カツン…カツン…


あわわ、どうする、翼!!


考えるより先に、私は音楽室の中に飛び込んだ。