ーピピッ、ピピッ、ピピピッ

「ほら翼!起きないと遅刻するわよ!」

「うわぁもうこんな時間!?

お母さん、コウちゃんは!?」

「とっくに来て下で待ってるわよー」


「えぇぇええ!?」

東郷翼、16才。今日から花の高校生。

「よしっ、おまたせコウちゃん!いってきまーす!」

あわてて玄関を出る。

隣には小さいころからの幼馴染、コウちゃんことコウスケ。
昔から私の隣で笑っててくれた。
突然わたしが決めた志望校にも、笑顔で俺もそこ行くって言ってくれた。
コウちゃんの行きたい進路に行っていいんだよって伝えたら、
「俺は翼と一緒ならどこでもいいよ」
って笑って返してくれるぐらい優しい。

私はそんなコウちゃんが大好きだ。
あ、もちろん幼馴染としてね。

それに、私がこの高校に来たかった一番の理由…、

それは、去年のコンクールに出てた彼に会うためだった。

「水原、瞬…」

おぼえているのは名前と、整った顔、それから綺麗なピアノの音だけ。


そんな理由でここに来たって知ったら、コウちゃんは笑うだろうか。


それでもかまわない。

ただもう一度、あの人に会いたかった。