荷物を積み終えた両親が軽く会釈して車に乗り込む。



「一緒にステージに立てなくてごめんね。
ほのか、ずっと大好きだよ」

美憂はきゃしゃな手でギュッとあたしを抱きしめてから、車の後部座席に乗り込んだ。

彼女の手には、あたしが渡した寄せ書きがしっかり握られている。



車のヘッドライトが点灯する。

彼女は車の窓を開け、あたしが見えるように角を曲がるまで身を乗り出していた。

車が走り去った夜の寮は、ひっそりと静まり返っている。



こんなはずじゃなかった。

ずっと美憂と一緒にいられると思っていた。



どうして美憂が辞めなきゃいけないの?

あたしは、全てを壊した週刊誌が憎かった。

これが有名税だというのなら、もうこれ以上有名になりたくない。



あたしはただ美憂と一緒にステージに立ちたかった。

納得いかない気持ちが、どんどん涙になって溢れてくる。



あたしたちはもう無名の新人アイドルじゃない。

いつまでも素人気分でいてはいけないのだと初めて思い知らされた気がした。