好きの代わりにサヨナラを《完》

騒がしかったクラスが、一瞬で静まりかえる。
本業が俳優の恭平の声は、かなりの迫力だった。



「てめぇらみたいな売れてないやつと違って、こっちは全然寝てねぇんだよ。教室くらい静かにしろ」

誰も返事はしないけど、クラスの全員が恭平の声を聞いていた。

さっきまで笑っていた女子も、恭平には反論しない。
妙な沈黙と気まずい空気が教室に流れていた。



恭平はあたしをかばってくれたんだろうか。

それとも、純粋に貴重な睡眠を妨害されて怒っただけなんだろうか。

あたしが声をかけようか迷っているうちに、恭平はまた目を閉じて眠りについてしまった。

気まずい沈黙を破るように、莉緒があたしのほうに振り返った。



「ねぇ、ほのか。今日学校終わったら、ちょっと付き合ってくれない?行ってみたいとこがあるんだ」

何度かメッセージをやり取りするうちに、『ほのか』『莉緒』と呼びあう仲になっていた。

あたしにとって、莉緒は救世主だ。

あたしは笑顔を作ってうなずいた。