好きの代わりにサヨナラを《完》

「あいつ、センターだよね。そんなに可愛くなくない?」

後ろからささやく女子の声が聞こえる。

あたしのことじゃないと思いたいけど、センターという単語が聞こえたから自分のことにしか思えなかった。



「全然可愛くないよね。超ダサイし」

このクラスでパッと見て名前がわかるほどの有名人は莉緒と恭平だけだ。

そんなに売れてなくてもここにいる子は全員芸能人で、あたしなんかより可愛くてモデルっぽい子もたくさんいた。



「おっさんと握手しまっくってるんでしょ?あたし、マジで無理」

微妙に本当のことも言われてるから、あたしは何も言い返せなかった。

怖くて振り返れないから、声の主もわからない。

あたしは聞こえないフリをして、うつむいていた。

「あいつ、枕もやってんじゃない?じゃないと、あの顔でセンターとかあり得ないっしょ」

「うわぁ、超キモい」

後ろからキャハハと高くわらう声が聞こえる。



「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!」

あたしの隣で眠っていたはずの男が、ドンと机を蹴った。