好きの代わりにサヨナラを《完》

「ほのか、おはよー」

莉緒があたしに気づいて手を振ってくれた。

「おはよう、莉緒」

彼女に笑顔で手を振り返したあたしの表情が、一瞬にして固まる。

まだ誰も座ってないあたしの席の隣には、金髪の男が眠っていた。



一ノ瀬恭平……

彼もこの高校だったの?

映画の撮影が終わると、もうそんなに顔を合わせることもないと思っていた。



まさか同じクラスになるなんて……

しかも、うちの高校の芸能コースは一クラスしかない。

三年間、彼と同じ教室で過ごさなきゃいけないと思うとゾッとする。



頬杖をついて切れ長の瞳を閉じてピクリとも動かない一ノ瀬恭平。

あまりに整いすぎた顔が全く動かないと、できすぎた彫刻みたいに見える。

あたしは物音を立てないように気をつけて自分の席に座った。