好きの代わりにサヨナラを《完》

ハッと顔を上げると、蒼もあたしのほうに視線を向けた。

恭平とあたしの長いキスがどアップで映し出される中、あたしは蒼と思いっきり目が合ってしまった。



もうポップコーンは諦めた。

「ごめん」と小さくつぶやき引っこめようとしたあたしの左手を、蒼は無言でつかんだ。

驚くあたしの手を蒼はギュッと握って、二人の間の肘かけに乗せる。

蒼はあたしの手を強く握ったまま、スクリーンに視線を戻してしまった。

あたしも彼に左手を預けたまま、スクリーンに視線を向ける。



あたしたちは、ずっと手をつないでいた。

蒼の手のぬくもりが伝わってきて、あたしは映画どころじゃない。

身動き一つできずに、彼の隣で固まっていた。



いつの間にか映画が終わってしまって、自分のグループが歌うエンディングテーマが流れる。

エンドロールが終わっても、蒼はまだあたしの手を離さなかった。