好きの代わりにサヨナラを《完》

どんどん話が進み、クライマックスが近づいてくる。

ついに、あのシーンが始まってしまう。



海が見える公園にたたずむあたしと恭平の姿。
制服を着たあたしが、恭平に向かってまっすぐ歩いていく。

あたしはいても立ってもいられなくなって、座席のカップに置いていたジュースを手に取った。



『好き……大好き』

恭平に告白するあたしの表情が大きなスクリーンに映し出される。

恭平とあたしが至近距離で熱く見つめ合う。

他人がやってるラブシーンでも観ていて気まずくなるのに、自分と恭平がやってる所なんて観てられない。

あたしは、ひたすらオレンジジュースを飲んでいた。



あたしの頬に、恭平の長い指が触れる。
恭平の顔が、ゆっくりとあたしに近づいてくる。

こんな肝心な時に、なんとジュースがなくなってしまった。
あたしは空になったカップを座席に戻す。



恭平の唇が、あたしに重なる。

もう観ていられない。

あたしはスクリーンから目をそらして、蒼との間に置かれていたポップコーンに手を伸ばす。

蒼も同時にポップコーンを取ろうとしていたんだろうか。
あたしの手に、蒼の指が触れてしまった。