好きの代わりにサヨナラを《完》

ポップコーンとジュースを買って、かなり早目に映画館に入った。

小さい頃はよく一緒に遊んだけど、中学生になってから蒼と二人きりで遊びにいくことはほとんどなかった。

こんなふうに彼の隣に座って映画を観るのは初めてだ。
彼との初映画が、まさか自分が出演してるやつになるとは思ってもなかった。

いろんな意味で緊張してしまう。

そんなに喉が乾いている訳じゃないけど、彼との沈黙が気まずくなる度にあたしはオレンジジュースを一口ずつ飲んでいた。



映画の上映が始まる。

照明が落とされた会場のスクリーンに、制服姿のあたしと恭平が映し出される。

蒼はどんな顔して観てるんだろう。

薄暗い中でチラッと横を見ても、蒼は気づかないかもしれない。
それでもあたしは、蒼のほうを向くことができなかった。