好きの代わりにサヨナラを《完》

「自分のは嫌?」

蒼の表情が少し曇ってしまう。

映画の内容を知っているだけに、蒼には観られたくなかった。
でも、せっかく前売券まで用意してくれた蒼の気持ちを無駄にする訳にはいかない。

「全然、嫌じゃないよ」

そう答えたあたしに、蒼は嬉しそうに笑ってくれた。



「男一人じゃ観れないからな……」

あたしのほうは見ずに、蒼は小さくつぶやく。

「あたしの映画観たかったの?」

蒼の気持ちが嬉しくて、あたしは大きな声で突っ込んでしまった。



「……んな訳ねぇよ」

「蒼、早く行くよ!」

蒼は恥ずかしそうにうつむいて、前売券をポケットに入れてしまった。

懐かしいショッピングモールが見えてくる。

あたしはふてくされ気味の蒼を追い抜いて、ショッピングモールの入口を目指した。