好きの代わりにサヨナラを《完》

「ほのかは全然変わんねぇな」

普段はキリッとした顔だけど、蒼は笑うと目がなくなる。

彼の笑顔があたしは大好きだ。

「そうかな……」

もう半年も東京でアイドルやってるんだから、少しは『綺麗になった』とか、『アイドルらしくなった』とか言ってほしかった。



「じゃ、行こっか?」

不満は口に出さずに歩き始めるあたし。

駅の近くにある大きなショッピングモール。
こんな田舎で遊びに行く場所と言えば、そこしかなかった。

東京に住んでる今では信じられないけど、昔のあたしにとってそこは憧れの場所で、遊びに行く時はいつも精一杯オシャレしてすごく都会に来たような気分になっていた。



「これ、観に行かねぇ?」

蒼は映画の前売券を取り出した。

「こ、これ観るの……?」

映画なんてデートの定番みたいなもの……
別に蒼に誘われて嫌じゃないけど……

蒼が持っているのは、あたしと恭平が共演しているあの映画の券だった。