好きの代わりにサヨナラを《完》

「おて」

犬は、あたしの手にすっとおてをした。

「おかわり」

今度は反対の足をさっと出してくれた。

「いい子でちゅね」

あまりに素直な反応に、思わず赤ちゃん言葉で犬の頭をなでながらぎゅっと抱きしめた。



「何やってんだよ」 

背後から聞こえる冷ややかな声。

犬の可愛さにデレデレだったあたしは、はっと真顔に戻った。

「あんた、そんなふうに笑うことあるんだ」

制服のポケットに両手を突っ込んだまま、恭平はあたしを見下ろしていた。