好きの代わりにサヨナラを《完》

「キスシーンできないとか……この仕事なめてない?」

クライマックスのキスシーンはあたしも拒否したけど、それはアイドルのイメージに関わるからとマネージャーも反対してくれた。



「女優だったら、ちゃんとやるんだろうね……
あんたアイドルだからって、中途半端な仕事してんじゃねぇよ」

普段はいい加減だけど、恭平のプロ意識はその演技を見ればよくわかる。

彼の演技は、細かい動作まで完璧だった。



「セリフも棒読みの癖に……全然伝わってこない。
悔しかったら、ちゃんとやってみろよ」

悔しいけど、恭平の言ってることが正しすぎて何も言い返せない。

何もかも中途半端な自分が情けなくて、あたしは恭平の隣でうつむいた。