好きの代わりにサヨナラを《完》

「休憩入ります」

あたしの演技、よっぽどまずかったんだろうか。

もともと怖そうな監督は、更に渋い表情をしている。
あたしは気まずくて、自分の席に小さく座っていた。



「あんたさ……」

それまでは爽やかな好青年らしく隣の席に座っていた恭平が、姿勢を崩して机に肘を乗せ、気だるそうに頬杖をついた。



「俺のこと、いい加減なやつだと思ってない?」

どうして急にそんなこと聞くんだろう。
役者さんは人の心が読めるんだろうか。

恭平のこと、遊び人だと思って避けていたのが伝わったんじゃないか。

あたしは焦りながら、全力で首を横に振った。



「プライベートがいい加減な俺と、仕事がいい加減なあんた……どっちが適当なやつなんだろうね」

周りの人に聞こえないくらい小さな声でつぶやく恭平。

抑揚のない淡々とした声だけど、彼の怒りははっきりあたしに伝わった。