好きの代わりにサヨナラを《完》

特に会話はなくても、母の背中を見ているだけで少し安心できる気がする。

あたしが暇そうな顔をしてると思ったのか、土鍋を取ろうと振り返った母があたしに声をかけた。



「ほのかも手伝う?」

「いや、いいよ……」

親不孝ものかもしれないけど、あたしは料理が苦手だった。

母にそうつぶやいて、スマホに視線を戻した。

あたしのスマホに、莉緒からメッセージが届いた。



『全国ツアーでほのかの地元に行くんだけど、ちょっとだけ会えない?』

莉緒は、最近仕事で学校を休みがちだった。

蒼とのスキャンダルが出てから、莉緒とは全然話せてない。



どうしてあたしが実家に帰っているのを知ってるんだろう……

莉緒には実家に帰るなんて言ってないのに、こんなメッセージが届いてすごく不思議だ。

それでも、あたしは莉緒と話したかった。

『あたしも莉緒に会いたい』とあたしはすぐに返事を送った。