好きの代わりにサヨナラを《完》

「何があったの?最近あんたおかしいじゃない……」

そう言って、母はまた湯のみに口をつけた。



「……別に、何も」

昔から母は勘が鋭かった。

母に隠し事はできないけど、何も言いたくない。

あたしは口ごもってしまった。



「アイドルなんかもう辞めなさい。向いてないのよくわかったでしょ?」

そう言うと、母は湯のみを音を立ててテーブルに置いた。



「あんたまだ高校一年なんだから、今から真面目に勉強したら大学受験間に合うでしょ?田舎に帰って、ちゃんと勉強しなさい」

「でも……」

何か言い返したかったけど、いい言葉がみつからない。

オーディションに受かった時にも、母は似たようなことを言っていた。

あの時のあたしは「絶対アイドルになりたい」と必死でお願いしたけど、今の自分にその気力はなかった。