好きの代わりにサヨナラを《完》

管理人さんが用意してくれたのか、母の前には湯のみに入ったお茶が出されていた。

母はまだ湯気がたっているお茶を一口飲んでから口を開いた。



「昨日のテレビ観たわよ」

母が初めてテレビであたしを観たのが、昨日の放送だったらどうしよう。

あたしはなんだか気まずくて、視線を両手で握っているスマホに落とした。



「あんたが出るテレビは全部観てるわよ。深夜番組も録画してるし」

全然応援してくれていないと思っていた母が、あたしが出る番組を全部観てくれてるとは意外だった。

少し嬉しいような、恥ずかしいような……

複雑な気持ちで、あたしは母を見上げた。