好きの代わりにサヨナラを《完》

蒼と離れてあたしは何を得られたんだろう。

あたしはこの場所に立っている意味がわからなくなってしまった。

オーディションに受かった時、初めて自分が認められた気がしてすごく嬉しかった。

だけど、あたしにはそれだけで充分だったのかもしれない。



誰かを勇気づけたり、笑顔にしたりするアイドルにあたしはなれなかった。

あたしはみんなに愛されるアイドルにはなれなかった。



誰かこの場所からあたしを連れ出してほしい。

誰もあたしのことを知らない遠い場所へ連れて行ってほしい。

助けに来てほしい彼の名をあたしは心の中で呼んだ。



ゆっくり目を閉じてから、まっすぐ客席を見据える。

そこには冷たい視線をあたしに送る人々がいた。