好きの代わりにサヨナラを《完》

「蒼……どうして……」

蒼はそれ以上あたしに近づこうとしなかった。

もう二度と会えないと思っていた。

蒼の顔を見て、あたしは涙がこぼれそうになってしまった。



「ほのか、俺のせいでごめん……」

蒼は入り口に立ったまま、低くつぶやく。

あたしは言葉がでなかった。

握手しようと出していた手を引っ込めて、自分の口をおおった。



「ほのかがオーディションに受かって、上京するって聞いた時……俺の気持ち伝えようと思った。だけど、ほのかの邪魔はしたくなくて言えなかった」

後ろに控えてストップウォッチを眺めていた剥がしのスタッフが、蒼の肩に両手をかけた。



「今日はこれだけ伝えに来た……俺は、お前のことが好きだ」