「暑いなぁ」

誰かが言った。
その通りだった。今日は夏一番の猛暑日らしい。

「このままじゃ、焼け死ぬわ」

隣に座る後藤 紘(ごとう ひろ)が下敷きをうちわのように扇ぐ。
体が大きく、狭いベンチを紘がもっと狭くしてしまっている。
僕は窮屈で仕方なかった。

「じゃあ、死ねば？」

「酷いなぁ」

「ヒロちゃんは丈夫だから死なないよ」

そう言ったのは紘の隣に座っている櫻井 直人(さくらい なおと)だった。
病弱で肌の色は白と言うよりは薄い水色と肌色を混ぜたような色をしている気がした。
あれ、こんな猛暑に直人が外にいる。
珍しいもんだ。

「いつまでヒロちゃんって呼ぶんだよ」

恥ずかしそうに紘は頭を掻く。
そっか、紘と直人は幼馴染だったっけ？


沈黙。


なんだ？