焦れ甘な恋が始まりました

 


「……日下部さん?」

「……、」



今度こそ完全に俯いて、押し黙ってしまった私の隣で、さっきまで意気揚々と話していた社長が、怪訝そうな声を出した。


……それは、そうだ。

私から話題を振って話をさせておいて、いきなり黙りこくってしまったんだから。


社長からしたら、訳がわからないにも程があるだろう。


それどころか、失礼な奴だと思われても仕方がない。



「……ごめん、俺、つい調子に乗って馬鹿みたいにハシャイで……」


「っ、」


「実は今日……ようやく役員の全員から、このハコのコンセプトに承認を貰って……。ようやく動き出せるってところまで来れたんだ。だからつい……抑えきれなくて……。せっかく金曜日で夜の海まで来てるのに仕事の話なんかして、雰囲気ブチ壊しだよな」