焦れ甘な恋が始まりました

 



ああ、もう……どうして寄りにも寄って、ぶつかったのが社長なの……


目の前にいる彼―――下條 修士(しもじょう しゅうじ)さんは、私が務める会社の現代表取締役社長だ。


32という年齢でありながら、彼が社長に抜擢されたのは、他ならぬ、彼のお父様がこの会社の会長に君臨しているため。


会長が45の時に生まれたという彼を、会長は幼い頃から徹底的に教育し、将来自分の会社を任せるべく人間へと育て上げたという。


主にホテルや旅館、温浴施設の経営、またはそれに付随するサービスを提供するこの会社は、現会長が一代で築き上げた、そちらの分野では名の知れた大手企業。


周囲の期待を一心に浴びながらも、ブレることなく立派に成長した彼、下條 修士社長は29の時にそんな我が社の代表取締役社長に就任し、数々の新規事業を推進。


若くして、そのカリスマ性を存分に発揮した。