「あっ、ぶな……」
「し、下條(しもじょう)さ……しゃ、社長……!?」
身体が反動で後ろへと倒れそうになった瞬間、がっしりと掴まれた腕。
そのお陰で私は後ろへとひっくり返らずに済んだけれど、顔を上げた先にいた人物に、思わず目を見開いて固まった。
「日下部さん。良かった、怪我はない?」
「は、はい……っ。すみません、私の方こそ、前方不注意で……!」
「いや、俺も急いでたから……でも、日下部さんに怪我させなくてホント良かった」
「っ、」
言いながら、優しく目を細めて笑った下條さん……基(もとい)、社長に、ドクリと音を立てた心臓。
少しだけ垂れ目な二重瞼の奥に覗く、綺麗なブラウンの瞳に見つめられるだけで、不謹慎にも心が浮き足立ってしまう。



