「……やっぱり、あった」
デスクの引き出しを開ければ、そこには予想通り、財布がしっかりとしまわれていて。
自分の間抜けっぷりに嫌気が差しながらもそれを手に取ると、私は今度こそ忘れないようにと鞄の中に押し込めて廊下へと歩を進めた。
エレベーター前、上の階から降りてくるそれの表示を眺めながら、これからまた駅まで戻るのかと再び憂鬱になる。
――――と。
「……え、」
「し、下條さ……社長……!?」
上の階から降りてきたエレベーターが止まって、扉が開いた瞬間。
中から現れたその人に、私は財布を忘れたことに気がついた時以上に、驚いて固まった。



