焦れ甘な恋が始まりました

 


まさか……どこかで落とした?

ううん、そんなはずない……と、思う。


会社から駅までの道程を、嫌な汗を滲ませながら思い返してみる。


鞄はハンドバッグでジッパーが付いているから、落としたとは考えにくい……というか、冷静に考えたら落とすわけがない。


と、言うことは。



「……会社だ」



そうだ。

そういえば、今日は小出ちゃんがお財布を忘れたから、飲み物を買うのにお金を渡して。


その時に、またお金をすぐに使うこともあるかもしれないと思って、デスクの引き出しにしまったんだ。


そしてそのまま、帰り支度をしている時にも気が付かずに、会社を出てきてしまった。


……まさか財布を会社に忘れるなんて、抜けてるにも程がある。