焦れ甘な恋が始まりました

 


改札前で、中から出てくるであろう蘭を待っていれば、直ぐ隣で熱い抱擁を始めたカップルに、目のやり場に困ってしまった。


このままここで、熱烈なキスでもしそうな雰囲気に、思わず一歩身体を反対側へと動かせば、何故だか負け犬になった気分。


……って。悪いけど、私はもう、そういうことをする年齢じゃないので。


心の中で言い訳がましいことを呟けば、やっぱり旗から見たら負け犬で。


それを見てみぬふりをしながら人の流れを眺めていれば、突然手の中の携帯が震えた。



「……蘭だ。どうしたんだろう」



画面を見れば、そこには蘭の名前と彼女が初めてデザインしたポスターの画像。


それに顔を綻ばせながら通話ボタンを押して耳へと押し当てれば、焦ったような申し訳無さそうな蘭の声が、私の鼓膜を震わせた。