焦れ甘な恋が始まりました

 


だからてっきり、火曜日の提案のことは私が受けた質(たち)の悪い冗談だと思っていたのに……



『急に今夜、時間が取れることになったんだ。だから、日下部さんさえ大丈夫なら』


「……今夜って、急過ぎます」


『……、』



あれは、やっぱり冗談ではなかったらしい。

突然のお誘いに、半信半疑どころか疑いしか持てずに言葉を返せば、電話口の社長が一瞬黙りこくってしまった。


だけど、いきなり今夜って。

それはホントに急すぎるよね?



『急に時間が取れることになったから、急ではあることには間違いないけど。……今夜、何か他に、先約でもあるの?』



何故か、刺のある口調になった社長に思わず尻込みしてしまう。


まるで先約があることは許さない、みたいな。


それが不満だという言い方に、思わず怖気づいてしまいそうになるけれど……