焦れ甘な恋が始まりました

 


✽ ✽ ✽



「……さん、くさか……さんっ、日下部さん!」

「っ、……は、はいっ!」



遠い昔に置いてきたはずの記憶を、今更になって掘り起こしてしまった金曜日。


終業まであと一時間というところで、私は隣のデスクの小出ちゃんの声に現実へと引き戻された。



「日下部さん、先程から携帯が鳴ってますよ?」


「え、え……あっ、」


「ずっと鳴りっぱなしなので、もしかしたら何か急用のお電話なのかもしれないと思いまして」