今更ながら、小出ちゃんの優しさに気が付いた私は、どうにも恥ずかしくなって曖昧な笑みを零すしかなかった。
そんな私を見て、やっぱり心配そうに瞳を揺らす小出ちゃん。
……小出ちゃんの旦那さんは、幸せ者だ。
こんなに優しくて素敵な子と、生涯を共にすることができるのだから。
「……ありがとう、小出ちゃん。でも、社長とは、そういうんじゃないの」
ゆっくりと、一言一言を確かめるように言葉を紡げば、小出ちゃんも私の言葉に静かに耳を傾けてくれる。
「私は、社長のことが好きだった。でも、社長は……私と同じ気持ちじゃなくて。社長の勘違いを利用して……ただ、私が、そばにいたかっただけなの」
言葉にすれば、なんてわかりやすい片想いなのだろう。
29歳にもなって、こんな風に不毛な片想いをするだなんて思ってもみなかった。
相手はあの、下條さん。
出会った頃から、私には手の届かない……雲の上の人。



