「…………狩野くんからだ。なんだろう」
光る画面を見れば、そこには狩野くんの名前が表示されていて、仕事で何かあったのかと不安になった。
けれど、さすがにココで電話を取るわけにはいかないと思い、慌てて席を立とうとすれば小出ちゃんに「別に、ここで出てくれていいですよ」と引きとめられる。
「でも……仕事の話だと、マズイし」
「私の結婚式が今日だって知ってるのに仕事の電話を日下部さんに掛けてきたとしたら、最後にもう一発、ガツンと言ってやりますよ!どれだけデリカシーないんですか、あの人っ。っていうか、狩野さんは、私から日下部さんを盗もうとしてるんです、絶対!」
「いやいや、私を盗むなんて、そんな」
「ぜーったい、そうです!!もし日下部さんが総務部から企画部に異動になったら、あの人、調子に乗りそうだしっ。でも、プライベートの日下部さんはあげないんですからっ。今日は、私の結婚式なんだから、私を優先してくださいっ」
「あはは……」
いつの間に、そんなライバルみたいな関係になったのか。
私の腕をガッチリと掴んで離す様子のない小出ちゃんに苦笑いを零しながら、結局私はその場で電話に出ることになった。



