焦れ甘な恋が始まりました

 


簡単に、決断できることではない。

それでも今、ハッキリと言えることはある。



「……例えばもし、私が総務部からいなくなっても、私の仕事は誰にでもできることだから、心配しなくても大丈夫」



淡々と。笑顔を浮かべながら至極冷静にそう返せば、小出ちゃんの眉間に深くシワが寄った。



「っ、そんなことないです!日下部さんがいなきゃ、総務部の仕事は廻らないに決まってます……っ!日下部さんが総務部からいなくなったら、どれだけの人が困るか……っ」


「……ありがとう、小出ちゃん」



小出ちゃんの嘘のない言葉と気持ちは、素直に嬉しくて、自然と感謝の言葉が口から出た。


……だけど、私の言葉にも嘘や謙遜は混じっていない。


この7年。社会人として働いてきて、私は幾度となく、こういう場面に出会してきた。


総務部と営業部。

小出ちゃんのように、昨日まで、そこにいた人が明日からはいなくなるという場面に、何度も。


その度に、周りの人は “ あの人がいなくなったら仕事が廻らない ” と嘆くけど。


いつだって……いざその場面が来てみれば、仕事が廻らなくなるという自体に陥ることは、一度足りともなかったのだ。