焦れ甘な恋が始まりました

 


それにしても、提案したいことがあるなんて、検討もつかないなぁ。


小出ちゃんの言う通り、接待関係の話ならまだ現実味はあるけれど、新規事業関連の話を社長から直接名指しで受けるようなポジションに私はいないし。


だとしたら、やっぱり接待関係?

クライアントさんの希望する条件に見合ったお店を探してほしいとか、そういう雑務系の仕事だろうか。

だけどそれって、社長付き秘書兼運転手の、立石(たていし)さんの仕事だろうし。


あ、立石さんの不得意分野のお店とか?


ちょうど、私ぐらいの年齢の女が好むお店を指定されているとかなのかも。


―――ポーン。

けれど、私が答えを探す間もなく、軽快な音を立てて止まったエレベーター。


開いた扉に促されるまま歩を進めた私は、社長室の前で足を止めると一度だけ小さく深呼吸してから重厚な扉をノックした。