「今、狩野が言ってくれた通り……マスコミに関しては、自信を持って受けて立とう。
それよりも懸念するべきは、ウチのクライアント各社にも同様の内容のプレスが配布されてしまっていることだ」
「!」
「向こうだって業界内では大手な以上、関係各社が重なっていることも仕方ない。だが、そうなると……各社の重役が、どちらの施設に訪れるか。俺としては、そこの方が気になるところだ」
正式なプレスを先に配ったのは相手で、明日に正式なものを配布する予定だったこちらは、完全に後手を打ったことになる。
「クライアントや関係各社からすれば、後日にプレスを送ってきたウチの方が日程を合わせたように思われて、印象的には悪くなることもある。
だからといって、ご招待しないのは余計に失礼に当たるし信頼関係を崩す可能性に繋がることもある」
最初から。社長が懸念していたのは、こういうことだったんだ。
相手企業のことや、新施設のことではない。
私たちを支えてくれている、昔からのお客様や……クライアント各社との信頼関係。
旗から見たら本当にくだらない意地の張り合いで、余計なことに大切な人たちを巻き込んでしまったことを、社長は心苦しく思っていた。
「……なんとか、こちらに来てほしい気持ちはあるが。ウチが後手に回ってしまった以上、無理強いはできないし……そうすることで、余計に印象を悪くする可能性もある」
眉根を寄せ、重く息を吐いた社長。
……そんな社長を見て。
いつだって、本当の意味で大切にすべきものを一番に考え、動き続ける社長のために今、私が何かできることがあるとしたのなら――――
「……少しだけ、お時間をくれませんか?」
「……え?」
「今から、すぐに必要なモノを取ってきますので……!」



