「だから、今更、向こうに日程を変更してほしいという申し入れはできないと思います。少なくとも一度プレスを配布してオープン日を公開した以上、それを覆すのは会社の信用にも関わります。もちろん、それは、ウチの会社にも言えることです」
「っ、」
「つまり、相手側に対して何らかのアクションを起こすことは、得策ではないということです」
そこまで言い切れば、狩野くんが納得いかないといった気持ちを押し込めるように目を閉じた。
……狩野くんの気持ちは、痛いほど理解できる。
でも……今ここで、向こうの会社に抗議の電話を入れたとしても、それはなんの解決にならないのも本当だから。
「……マスコミの件に関しては、俺は正直、そこまで心配はしていない」
「え?」
「確かに規模として見たら、VENUSは向こうに随分劣るけど……大切なのは規模ではなく、内容だ」
ふわり、と。
再び柔らかに笑った社長は、手に持ったVENUSのプレスを愛おしそうに見つめた。
その声に再び、狩野くんが閉じていた瞼を持ち上げる。
「ほら、美人は三日で飽きるっていうだろ?外見だけじゃ、意味がない。どんなことでも、大切なのは外見より中身だ」
言うだけ言ったくせに、フォローの言葉すら紡げない私の代わりに。
社長は声色を優しく、それでも強い意志の篭った言葉を……狩野くんに向けて放ち続けた。



