焦れ甘な恋が始まりました

 


受話器から聞こえる、無機質な機械音。


呆気無く切られてしまった電話に、呆然とするしかなかった。


急に、どうしたんだろう……

昨日の件でって、何か仕事で社長とやり取りするようなこと、あったっけ?


それにしても……またあとで、なんて。そんな言葉に思わずキュンとしてしまう私は、本当に現金な奴だけど。



「社長、なんのご用だったんですか?」


「うん……なんか、提案したいことがあるとか何とか……」


「へぇ……何か、接待関係のお話ですかね。それか、新規事業関連?」


「うーん……。ほんとに、なんだろう。あ……お昼休みに来てって言われたから、今日はお弁当一緒に食べられないかも。ごめんね?」



言いながら隣の席の小出ちゃんを見れば、彼女は軽快にキーボードを叩きながら、「社長からの呼び出しですし、そんなこと気にしないでください」と、笑ってくれた。