「どんなことにも必ず突破口はあるはずだし、逆風も大きなチャンスに変えられる……って。俺は、あの二人から教わった」
……ああ、そうだ。
下條社長は以前から、こういう人だった。
どんなピンチもチャンスに変える。
突破力と、それを裏付ける確かな実力を備えた、私たちの会社のトップに君臨する人。
そしてそんな社長を育てたのは――――今日まで、この業界を支えてきた人たちから受け取った、かけがえのない言葉と気持ちだったんだ。
「そもそも、だ。今回、こんな風に同じ日程で施設のオープンをぶつけてきたのは単純に言えば――――ヤキモチ、らしい」
「ヤ、ヤキモチ?」
「そう、ヤキモチ。なんでも、現真野社長は以前から “ 俺 ” にライバル心を抱いてたらしくて。俺は社長に就任してからすぐに会長から経営権を委ねられたってのに、俺よりも10歳も年上の自分が名ばかりの社長のままで、経営権を譲ってもらえないのが気に食わなかったんだとか」
確かに……社長の言う通り、一番のライバル社であるウチが世代交代をしたというのに、自分は中々経営権を譲ってもらえないとなれば、フラストレーションは溜まるだろう。
でも、だからといって、そんなことで長年培ってきた信頼関係を破綻させるようなことまでする……?
「それで今回、真野会長が体調を悪くして動けなくなったのを良い事に、指揮権を強行突破で奪い取って、新施設のオープンを早めたんだとか。
会社の規模も実力も――――俺に勝っているんだと、自分たちの会社の役員に示すために」



