焦れ甘な恋が始まりました

 


再び声を張り上げた狩野くんに、いつからそこに立っていたのか――――秘書兼運転手である立石さんが、「落ち着いてください」と静かに声をかけた。


それに「……すみません」と答えた狩野くんの拳は固く握られ、小さく震えている。


……当たり前だけど、VENUSのオープン日程はマスコミからの取材の関係もあり、もう数週間前にはある程度の情報をWEBや営業さんの手で流していた。


もちろん、当たり前にその情報は現真野社長の耳にも届いていただろう。


私たちだって、詳細は知らずとも現真野社長が指揮する会社が新施設を近々オープンする予定であることは知っていた。


同じ業界内だから噂は自然と広まるものだけど、主に営業部が情報を聞きつけ確認を取り、そうしている内に総務部内でも話が広まっていくのが通例だ。


もちろん……以前から社長の耳にも、向こうの新施設の話は届いていただろう。



「こんなの納得できませんっ。業界内での暗黙の了解やルールは無視ですか!?あっちは、そこまで常識のない会社なんですか!?」


「……狩野」