「VENUSのオープン日は、向こうだって知ってたんですよね!?VENUSのプレスだって、明日には正式なものを流す予定だったし……っ。それなのに、今更こんな……当て付けとしか思えませんっ!!」
ダンッ!!と、社長のデスクに拳を叩き付けた狩野くんを前に、眉間にシワを寄せて難しい顔をする社長。
社長のその表情に、再び胸に暗雲が立ち込めて息をするのも苦しくなる。
本当に、どうしてこんな……
友好関係にあったはずの相手が、どうして今、このタイミングで?
「……あっちは最近、経営者が変わったんだ」
「え?」
「今までは、実質的に現会長の真野さんが会社を動かしていた。お前たちも聞いたことがあるかもしれないが、真野会長とウチの親父……いや、下條会長は、プライベートでも親交が深い」
社内で社長が会長のことを、父と呼ぶのを初めて聞いた。
だけどそれだけ……社長にとっても、今回のことは予想外の出来事だったということだろう。
「真野会長はウチの実力を買ってくれていたし、いくらライバルだといっても “ お互いに温浴業界の発展を目指していこう ” というスタンスを常に保つように振る舞っていた。だけど……それは、真野会長が経営権を握っていたからこその話だ」



