「これ、ウチみたいな競合施設だけじゃなく、当然マスコミ各社宛てにも流してますよね。取材に関するお問い合わせ先とかまで記載されてるし……」
小出ちゃんの言葉に、もう居ても立ってもいられなかった。
「……ごめん、私もちょっと社長のところに行ってくるね」
言いながら、午前中までに終えた仕事の書類をまとめ、デスクを片付ける。
総務部のメインアドレス宛にメールが送られてきているのなら、当然、社長宛にも同様のメールが送られてきているだろう。
問題のメールの差出人である競合相手は、会長が会社を指揮していた頃からウチと並ぶ、一番のライバル社ともいえる会社だ。
だけど同業者ということもあり、こういった大きな施設のオープン時には「どうぞ、見に来てください」と、お互いに堂々と相手を招き入れる……
そんな、ある意味、ライバルでありながらも共に温浴業界のトップを走ってきた戦友でもあって、向こうの会長ともウチの会長は親交が深いと聞いたことがあった。
だからこそ……今回、こんな風に同じ日程で新施設のオープンをぶつけてきた事に、動揺が隠し切れない。
これじゃあまるで、VENUSのオープンを邪魔しようとしているみたいだ。



