焦れ甘な恋が始まりました

 


その時の狩野くんは、目も当てられないくらいに落ち込み、自信に満ち溢れていた姿が嘘だったかのように自分を卑下していたんだと、以前、企画部へとご挨拶に伺った時に企画部長が話してくれた。


確かに、学生時代から成績優秀で、あまり挫折という挫折を経験したことがなければ、大きなミスをしてしまったことは、精神的に堪えたかもしれない。


それは、自分に確固たる自信を持っていたら尚更だ。


そんなこともあり、それからしばらくは企画部の上司たちの下で、堅実な仕事ばかりをしていたらしい狩野くん。


だけど狩野くんは持ち前のモチベーションを下げることはせず、上司に守られながらも確実に一歩一歩、勉強と経験、実績を重ねてきた。


そんな狩野くんの仕事ぶりが上司たちに認められ、ついには社長の目に止まり、今回、VENUSのオープン企画を任せられるまでに至ったんだとか。


約一ヶ月前、オープニング企画の完成案を社長にプレゼンして見事に了承を得たあと、社長が「あいつなら、絶対に期待以上のものを持ってきてくれると信じてた」、と。


とても誇らしそうに微笑みながら話していたのが、今でも鮮明に思い出される。



「日下部さんは、オープン日はVENUSに来るんですよね?」


「うん。オープン日は三連休の初日で盛り上がるだろうし、総務部はマスコミ対応することになってるから」


「そっかぁ。それは、三日間ともですか?確か、マスコミが来るのは初日だけって話ですよね?」


「ああ、うん。初日はマスコミ対応で、二日目は入口でお客様が混乱しないように誘導のフォローがあるけど、三日目は……」


「三日目は?」


「…………その三連休の最終日が私の結婚式なので。日下部さん含む総務部の皆さんは、私の結婚式に出席してくださる予定なんです」