焦れ甘な恋が始まりました

 


眉尻を下げながら思わず溜め息を零せば、「あと少し、よろしくお願いします」と、幸せいっぱいの笑みで返事を返された。


それに祝福の気持ちで胸が埋め尽くされていたはずなのに……ほんの、少し。


羨ましいなぁ、なんて、不謹慎なことを考えてしまう自分が嫌になる。


「杏、お前、結婚はまだなのか?」

頭の中で、ついこの間実家に帰った時に父に言われた言葉が蘇って、急いでそれを揉み消した。


お父さんてば、結婚はまだなのか、って。

彼氏すらいないのに、結婚なんて話が出てくるはずないじゃない。


そもそも彼氏なんて……もう五年は軽く、いないのに。