「……なんて言ったらいいか、わからないんですが」
だけど私は、その考えの全てを上手く伝える術を持ってはいなくて。
狩野くんのように企画書を作成したり……社長に堂々とプレゼンできるような技術も持ち合わせていない。
一瞬、考えて。それならいっそ、自分の話をするしかないと結論付けた。
「……今、私が住んでいるところに、小さな八百屋さんがあるんですけど。私、その八百屋さんの大ファンで、家で食べる野菜だけは必ず、その八百屋さんで買ってるんです」
突然の私の言葉に、やっぱり意味がわからないと首を傾げる狩野くん。
「そこのお野菜は、新鮮ですごく美味しくて。それだけでも、もちろん買いに行く理由にはなるんですけど、私は何より……その八百屋さんの、おばあちゃんに会いたくて」
「八百屋の、おばあちゃん?」
「……はい。そこの八百屋のおばあちゃん、私が野菜を買いに行くたびに、“ 今日は、顔色があまり良くないんじゃない?疲れてるのかしら? ” とか……その日の私を見て、声を掛けてくれるんです」
寂れた商店街の片隅にある、小さな八百屋さん。
初めて野菜を買いに入るまでは、このお店はいつ潰れてもおかしくないだろうなぁ……なんて、失礼極まりないことを思ってた。
だけど、一歩足を踏み入れたら、そんな私の考えは一蹴されて。
気が付いたら私は、その小さな八百屋さんの、ファンになっていたのだ。



