焦れ甘な恋が始まりました

 



――――「発想の転換だよ!息詰まった時は、思い切って視点を変えてみるの」

それはよく、デザイナーである妹の蘭が口にする言葉だけれど。



「……例えば、ですけど。名物女将を作ってしまう、なんてどうですか?」


「め、名物女将?」


「はい。名物女将が何人かいて、本格的な会席料理を出してくれるんです。あと……会席料理に添える飲み物も、本格的なお抹茶にするとか。もちろん、裏で料理人さんが調理するんですけど、配膳は女将たちにお願いして」


「、」


「ほら、よく老舗の料亭とかには、着物を着た女将がいたりしますよね。それによく、ドラマとかで小さな小料理屋さんでも “ 女将さん、お勘定よろしく! ” とか、酔っ払ったオジサンとかが言ってたり……」


「酔っ払ったオジサン……」

「……くっ、」



私の言葉に社長が喉を鳴らして笑ったけれど、思わず視線を向ければ「ごめん、気にしないで続けて?」と、再び話の主軸へと戻される。



「なんていうか……上手く、言えないんですけど。お店を選ぶ時って、ただ “ 美味しいから ” じゃなくて、そのお店の雰囲気とか、店員さんとかも選択の中に入る気がして」



ああ、アレが食べたいなぁ……と思う時があっても、そのお店の雰囲気が良くなかったり、店員さんの態度が悪かったりすると、つい二の足を踏んでしまうように。


いくら美味しいものを食べることができても、サービスの悪いお店では、心は決して綺麗になれないし、また来たいとは思えない。


美味しいものを食べても、少しでも嫌な気持ちになってしまったら、何もかもマイナスになってしまうと思うんだ。